龍勢ロケット

自転車キャンプツーリング記

吾野から宇宙へ

2024.5.3[金・祝]-5[日・祝]

日記

5月3日(金・祝) 終末ランドナーどこへいく?
吾野駅

先日「終末トレインどこへいく?」の聖地巡礼として、東京葛飾の自宅から埼玉県飯能市の吾野駅までサイクリングした。じゃあ五月の連休はそこからでいいよね。という軽い思い付きで西武鉄道池袋線を乗り継ぎ、吾野駅で輪行を解く。早目の昼食として駅前の売店で山菜うどんを頂く。汁がスッキリして飲みやすいのは良い。吾野湧水を汲んでスタート、どこへいく?

関八州見晴台

秩父へ向かう基本は正丸峠なのだが、崖崩れとの情報がある。それなら奥武蔵グリーンラインに行ってみよう。ややキツいアプローチで顔振(かあぶり)峠まで登れば、緩やかなアップダウンのスカイラインとなる。関八州見晴台に寄ると、眼下には西武ドームなどなど。道中多くのサイクリスト、トレイルランナー、ハイカーらが行き交う。刈場坂峠を経て、標高850mの大野峠から丸山林道の急坂を西へ下りれば国道299号に合流。車道はひどい渋滞…、だからGWに観光地へクルマを出すなと。

音楽寺より武甲山

ごった返す秩父市街を西へ抜けるあたりのスーパーで一休み。武甲山の眺望が良い秩父公園橋を渡って丘を登り、音楽に御利益があると云う音楽寺にお参りする。手を合わせて「上手くなりたい上手くなりたい!」…ミューズパークの尾根道を縦走してみるも、ラブライブ要素は無い。小鹿野の町並みを抜けて、旧両神村の両神温泉で入浴する。ここら辺で頼みの綱であるハマーズキャンプ場は豪雨災害で休業中とのこと。それなら人目につかない場所でゲリラキャンプするのも仕方ないね。星空は東京に比べれば綺麗だが、かに座が判別できる程ではない。

5月4日(土・祝) 天文台でメキシカンハットダンスを
城峯山展望台より

早朝のうちに秩父市吉田地区へ移動し、椋(むく)神社にお参り。ここは「龍勢」という祭りが有名で、農民ロケットが次々と宇宙に向けて発射されるさまは一生に一度は見てみたい。超平和バスターズによる奉納もあったようだ。さあ僕も宇宙に向かって懐かしの龍勢ヒルクライム、石間(いさま)峠フィニッシュを目指すぞ。

・・・ちょっと記憶違いで、レースコースではなく大会の下山路を登っていたようだ。つまり余計に急坂だが、クルマが滅多に通らないので呼吸を深くできる。石間峠から少し歩けば、一等三角点を擁する城峯山1,038mに到達。がっちりした展望台が健在で、武甲山〜雲取山〜甲武信ヶ岳〜御荷鉾山といったパノラマが凄い。特に両神山の威容が間近で、あまりの絶景に30分ばかり長居した。それでもまだ午前9時だ。

十石峠への道

北に林道を抜けるとそこは群馬県だから、心して行け。神流町に入ると鯉のぼり祭り目当てなのか、また大渋滞。だからGWに観光地へクルマを出すなとあれほど。道の駅万葉の里の食堂はピーク前で、ますの天ぷら重とそばのセットを頂く。時間はあるので、のんびりと観光吊り橋を渡るなど散策する。ここも駐車場待ちの大渋滞が始まっているし、ヅラかろう。上野村に入り、道の駅上野では名物の十石みそソフトクリーム…まぁこんなものか。トンネル群を避けて旧道を進んでいると、つい寄ってしまうのが慰霊の園。あの航空機事故が無かったら、今の世の中はまるで違うものになっていた、かもね。

そうこうしているうちに旧黒澤家住宅を見学する時間がなくなったのは心残り。5月らしからぬ暑さのもとさらに西へ、いよいよ十石峠アタック開始。国道299号の標識こそあれど、離合困難な隘路が続く、まさに酷道。通行できるだけ有り難い事なのに、ゴールはまだかまだかと苦しむ。クルマやバイクの通行がそこそこあり、チャリも居たかな。終盤はやや楽になるけど、標高1,351mの峠に到達した時はガッツポーズしてしまった。立派な展望台からの眺望は今ひとつ。ハンガーノックになる前に長野県佐久穂の街へ下ろう。

うすだスタードーム反射望遠鏡

臼田町(現佐久市)に入りゲリラキャンプ地を確保、頭から水を被る。夜は「うすだスタードーム」という天文台へ。予約不要で60cm反射望遠鏡などで天体を観察できる。まずりょうけん座球状星団M3…なんというシャープな分解能! たまたま手前を人工衛星が通り掛かったので、静止画を見せられている訳ではなさそうだ。野外に出て天然プラネタリウムの下、坪根先生の解説を楽しみながら20cm鏡でかに座散開星団M67(プレセペとは別)。また60cm鏡に戻っておとめ座ソンブレロ銀河M104、何たる神々しさか! あっちでも無数の文明、宗教が発生と消滅を繰り返しているのだろう。質問したい事は山ほどあるけど、GW中の大盛況とあってそれはまたの機会に。

5月5日(日・祝) 宇宙とはコンニャクである
JAXA美笹深宇宙探査用地上局

美笹湖から懐かしのヒルクライム佐久のコースを登る。標高1,600mから先は冬季閉鎖中だが、ここまでで良い。大会の頃はまだ無かった、JAXA美笹深宇宙探査用地上局の最新鋭54mパラボラアンテナがどーーーんとそびえている。昨日の道中から遠くに見上げていた謎施設がこれだ。近くの丘からは美ヶ原〜北アルプス〜北信五岳〜浅間連山の大パノラマで、純白の巨大アンテナと合わせ完全勝利な絶景が広がる。

ここからが最難関。この旅の本丸であるJAXA臼田宇宙空間観測所へ直線距離は1kmあまりなのだが、尾根を越えるため通常は一旦標高差700m下ってからの登り直し。あるいは400m下って短絡ダートがある。だがここにもう一つ、Googleストリートビューにないダートの短絡路がある。果たして通行可能なのか、恐る恐るダウンヒル開始。大小の砂利で非常にコントロールが難しく、ランドナーでは厳しいか。つーか自分の腕力の無さに絶望して、小刻みに休憩を入れつつへっぴり腰で、ようやく舗装路に合流できた。

臼田宇宙空間観測所

あとはもうひと登りすれば、臼田宇宙空間観測所64mパラボラアンテナに到達! 間もなく見学の開場時間となり、無料ながらカードを3枚貰える。ドリンク自販機の存在が有り難い展示施設を見学したり、でっかいアンテナをバックに記念撮影をしてもらったり。耐用年数を超えて運用しているというが、最近でも小型月着陸実証機SLIMとの通信など大ニュースになっている。私もすっかり宇宙に到達した気分だ。

市街地に戻って稲荷山公園コスモタワーでぼうっと景色を眺める。もうエキストラサクセスで良いだろ。私が満足するまで終わらない旅と言うならとっくに満足しているし、佐久平から新幹線で帰ろうか。・・・けどもう一つ田口峠を越える予定だったし、そこは完遂しよう。ぼさっとし過ぎて近くの名所に寄る余裕はなくなったが、持ち直した脚力をぶん回して東へ急行する。

吾野佐久map 南牧村

あっけなく田口峠トンネル1,110mに到達。中央分水嶺なのにここは県境ではなく、コークスクリューめいた狭い急坂を降りていく。頑張れ俺の腕力。養蚕農家の集落があり(馬坂地区は住民2人だとか)、それから群馬県になる。蝉の渓谷くらいは見て行こう。南牧(なんもく)村は高齢化率日本一の称号を恣にしているからどんだけ寂れているんだ、と思ったが人の気配はそこそこある。GW中で里帰りしている人が多いせいかも知れないが。

道の駅オアシスなんもくでコンニャク製品を買い、いぶしと言う謎補給食を摂る。聞いた話、この村にはガソリンスタンドが無いそうな。下仁田町に抜け、下仁田駅で輪行。上信電鉄は28年ぶりに乗るけど、ガタンゴトンガタンゴトン♪本当に良く揺れる。今回のGW旅も(緊急連絡用にスマホは携帯するが)原則として通信は封止した。いわゆるデジタルデトックスってやつだが、そんな横文字が馬鹿にならない。情報を処理するのではない、考える人間としての自分を取り戻したようなこのスッキリ感、誰かに伝わるだろうか。


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