元々は去年11月頭に予定していた四国ツーリング。弔事で全部キャンセルとなったが、再度同じ旅程で組み直した。新しいカメラレンズ、新しいペダル、新しいシューズが旅アイテムに加わり、土曜の午後に満を持して家を出る…が、ジョギングシューズFreshFoamX1080のアウトソールが広過ぎて、狭いフラットペダルを踏めない事が発覚。慌ててスリムなHanzoRに履き替え、改めて出発。
お台場近くの東京港フェリーターミナルに到着。小径自転車カラクルSを折り畳み、乗船の時を待つ。かつては様々な旅客航路があって賑わったのだろうか、現在はオーシャン東九フェリーの東京〜徳島〜北九州航路を残すのみで、売店すら無い。今日は三連休の初日とあってそこそこ客は集まってくる。暗くなって「フェリーどうご」に乗り込み、嬉々として写真を撮り回る。
19時出港。ターミナルが離れて行き、東京ゲートブリッジを潜る。飛行機がひっきりなしに発着する羽田空港や東京湾アクアラインを通過…。やはりあらゆる移動手段の中で、船の旅情は格別に高い。デッキはかなり寒いのだけれど。残念ながら船内レストランは無いので、食品スーパーで買った惣菜を夕食とする。風呂に入ってぽっかぽか。今時のフェリーは大部屋でも寝台特急めいたカプセルタイプで助かる。
エンジンの「どぅん、どぅん、どぅん、どぅん」というノック振動がベッドに伝わり、寝るための施設としては間違っていると思うが、慣れるしか無い。日曜の朝を迎え、冷食自販機のハンバーグカレーを朝食とする…これ旨いな。場所により電波は通じるし、和歌山県の潮岬通過など撮影ポイントはあるけど、基本はぼーっと過ごすしか無い。それが良い、こんな旅がしたかった。
![]() |
![]() |
![]() |
姉妹船「フェリーりつりん」とすれ違ったあと、定刻通り徳島沖洲にて下船し自転車を展開。四国本土への上陸は実に15年ぶりとなる。すぐ近くの新鮮なっとく市にレストランがあり、昼食として刺身三種とアジフライ定食を頂く。すなわち鮪・鰤・鯛の刺身とふっくらアジフライ2枚が付いて1,480円はリーズナブル! さらに新町川沿いに少し遡ればもうJR徳島駅、今日の走行はこれだけだ。また輪行して、南へ向かう牟岐線に初乗車。2両編成の気動車は阿南から単行となる。「あり方」が問われるローカル線だが必殺徐行とかは無く順調に、美波町の日和佐駅で下車。
日和佐が舞台地だったNHK朝ドラ「ウェルかめ」も15年くらい前か。あと、ここらのメーカーが作っていたMac用ワンセグチューナー「PCTV-hiwasa」を持ってたなーなんてことも思い出す。駅前のケアンズホテルにチェックイン、夕食はまたスーパーの惣菜等。
祝日の月曜、まずは早朝ジョギングに出る。計画が綿密すぎて、想定通りの景色を見るばかりになりがちな自分の旅行だけれど、大浜海岸から貴重な「だるま朝日」を眺めることが出来たのは僥倖と言えよう。日和佐城から高台の快適なトレイルを周り計10km、ホテルに戻る。シャワーを浴びてチェックアウト。まだ時間はあるのでFieldDiscoveryGameアプリのスポット拾いをしつつ、八十八ヶ所霊場の第二十三番札所、薬王寺をお参り。戒壇巡りなんてのもある、ありがたやありがたや。瑜祇塔からの眺めも良いが、わずかに雪が降ってっぞ?
単行列車を阿波海南駅まで乗って牟岐線完乗を達成し、すぐに阿佐海岸鉄道DMV(Dual Mode Vehicle)に乗り換え。予約客と飛び入り客でちょうど満席となり、この便だけを見ると成功しているように感じられる。バスとしてやってきた車両はモードインターチェンジで鉄輪をレールに乗せ、鉄道モードに変身する。フィニッシュ。これだ、これに乗りたかったのが旅のきっかけだった。なお車体はマイクロバスを魔改造したもので、輪行は無理。終点の宍喰温泉まで往復利用となる。ガッコン、ガッコン…独特のサウンドでレール上を駆け抜けたあと、甲浦でバスモードにチェンジ。フィニッシュ。何だか車体が重々しいと感じながら終点へ。復路の客は1/3ほど、それも観光客である。往路は最前のオタ席、復路は最後席を予約しておいて座ったけど、後ろのほうが左右に揺れる乗り心地がする。
さて、そろそろ私もモードチェンジしようか。北の終点である阿波海南文化村から歩いて、途中のスーパーで昼食を調達しつつ阿波海南駅に戻る。放置していたカラクルSを展開して漕ぎ出し、国道55号を南へ高知県に入ってようやくサイクリングらしくなる。左に美しい海、右に険しい山、最高だ。順調で時間も出来たので、むろと廃校水族館に寄り道。校舎の懐かしい雰囲気と、プールのウミガメなどを見る。室戸世界ジオパークセンターまでは欲張れなかった。
これを見ずして空海を語れない御厨人窟(みくろど)は見ていく。中村さんちのみっくろーど♪なんちゃって。かくして夕刻の室戸岬に到着、チェックイン前に少し散歩をしておこう。高い知名度の割に観光地化されておらず、室戸荘が唯一無二の民宿となる。鮫の軟骨付き、鯨の舌、鰹、金目鯛などなど豊富な海鮮の夕食に、大変親切な女将さんたち。これで一泊二食8,000円は奇跡の宿と言えるのではないだろうか。
夜は岬の岩場にて星空観察。何しろ日本最強の灯台があって10秒毎に光線が横切るのだけど、それでも都市部とは全く違う! 漆黒の空に無数の輝く星々は天然のプラネタリウムそのもの。かに座や冬の天の川も目視し、カノープスが見放題! APS-Cカメラα6700に、買ったばかりの大口径広角単焦点レンズ「E 15mm F1.4 G(SEL15F14G)」も持ってきておいて良かった。地味にトラベル三脚も重かったのだ。ただし撮影スキルはまだまだね。
火曜、日の出の時刻だがカマス焼き等の朝食を優先して済ませ「2時間で帰ってきます」と宿に断ってジョギングに出る。西海岸の旧道を北上し、室戸スカイラインに入って南へ戻るルート。標高260mの山頂展望台からは東西それぞれ北に伸びる海岸が絶景だが、岬の方は木々や電波塔が邪魔。第二十四番札所、最御崎寺(ほつみさきじ)をお参りし灯台にも寄って、厳しい石段の遍路道を降りて何とか15kmを2時間で帰って来る。改めてチェックアウト。また来られるかな?
室戸岬西海岸の国道55号を北上し、先を急ぎたいが第二十五番札所、津照寺(しんしょうじ)はお参りしておく。行当岬(ぎょうとうみさき)、吉良川の町並み、羽根岬と岬めぐりのチャリは走る。こんな旅情が、はるか先祖をアフリカから日本に導いたのだろうか。このまま土佐湾の向こうまで行きたくなる風景だが、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線に乗るんだ!という目的もある。阿佐線の東西を繋ぐ夢は俺の脚で達成した。奈半利駅で輪行と昼食を済ませ、いざ乗ろうとしたら財布に千円札が無い。これでは高額紙幣未対応の自動券売機が使えない!とパニックになりかけるが、とりあえず小銭で一番安いのを買って着駅で何とかしよう。「しんたろう号」に飛び乗る。
平日とあって客は地元民数人。鯨めいた単行車両は海側がオープンデッキになっている大胆な構造で、直に浴びる風が夏場は気持ち良いだろう。ガラス越しでない眺めはどんな車窓よりも絶景だ。安芸駅で普通に普通な気動車へ乗り継ぎとなる。車体や各駅にキャラクターが書かれているし、このあたりでやなせたかし氏の功績は計り知れない。後免駅で下車。JR駅なので駅での精算は出来ず、ウテシにやってもらう。すまんな。またチャリを展開する。
ラストランは、とさでん軌道に並行して西へ進む。路側帯がレールに接していて、そのまま走っていると電車に衝突しかねないのでスリルがある。やがてドンキが出来たばかりの大都会に入り、はりまや橋交差点を経てJR高知駅でフィニッシュ。お土産を買って、特急南風号に乗る。平日の半端な時刻にも関わらず大変な混雑である。3両編成じゃ足りない、せめてもう1両増やせないものか。しれっと自由席の窓側席を確保できたのだけれど。
車窓に大歩危小歩危を見るなら左側に座るべきだった、なんて贅沢は言わない。そのまま岡山まで乗っていれば良いものを、多度津から快速に乗り継ぎ高松駅に寄る。少し歩いて吉野湯という銭湯に入りスッキリ。商店街のさぬき麺業で讃岐うどん天ぷらぶっかけを食って駅に戻れば、いよいよアイツが入線してくる。あこがれの寝台特急「サンライズ瀬戸号」! 27年前の車両と云うが、車内Wi-Fiが無いことを除けばめっちゃ新しい感じがする。へーこうなってるのかぁとうろうろ写真を撮り回っちゃうし、どうも落ち着かない。歯を磨け。
部屋はBシングル上段。窓が広い! 輪行自転車もカラクルSなら個室内のエントランスに入る(下段はどうだか知らない)。やがて出発進行。部屋の電灯消し放題! 星はあまり見えないのだけれど。瀬戸大橋を経て岡山でサンライズ出雲を併結。こんな究極の非日常、眠るのが勿体ない。
水曜、気がつけば沼津付近。往路のフェリーよりずっと寝心地が良かった。やがて車窓に日の出が昇り、通勤ラッシュが始まる頃の東京駅に到着。有休は今日まで取ってある、グフフ。