6月7日 さよなら釜トンネル
のたうち回るように早起きして、7時には出撃。今日は日本山岳観光地の筆頭、上高地に行くのだ。天気予報によれば午前は晴れ、午後は雨になっている。どうか間に合ってくれ! 自ずとペースがアップする。
上高地なんて同じ松本市内だし、たかだか片道50km、1000mUPで辿り着く。なのに行くのはかなり久々だ。それは地図を見るだけでもゾッとするほどの長いトンネル群が行く手を阻んでいるからである。ドライバーがうとうとしていて、暗いトンネル内でチョコマカ動くチャリに気付かずドーンと来たら私は命を落とす。後ろから大型車の轟音が近付いてくる時の恐怖感に、精神力は大きく奪われるのだ。それでも余計な観察力が働き、ついに「ガードレールの金属片」を発見。感激。…で、これって通報した方がいいの??
中ノ湯三叉路に到達すると、いよいよ最後の難関、釜トンネルである。マイカー乗り入れ禁止なので、通行は自転車の特権とも言えるが、内部は15%の登り坂で岩盤むき出し、漏水がしたたりとても狭い。そんな名物坂も、来月には“新”釜トンネルの開通によって使われなくなるので、自分が通るのは最後になるだろう。ズバリ、その登り納めのために今日こうやってのこのこやってきたのだ。感触を味わうように、ペダルを踏みしめる。後ろから路線バスが襲ってくる。やむなくチャリを降りて壁にへばりつき、通過を待つ。これが釜トンネルの醍醐味!
トンネルを抜けても、続く釜上洞門の激坂。後輪がホイルスピンしやがった。しかしそれをも抜けると、もうこっちのもの。地獄から天国とはこのことだぜ。まずは丸っこい火山の焼岳がお出迎え。そしてカーブを大きく右に曲がると、大正池の向こうに巨大なU字谷を包む穂高連峰が、まさに穂高連峰のように穂高連峰している。「来たーーーー!!」「来たーーー!」を思わず連発。丁度うちを出てから3時間後であった。奥穂高岳の山頂が雲に見え隠れしてよく分からないのが残念だが、残雪がまだ多く残る季節に来るのは初めてなので、そのコントラストによる衝撃もかなりのものだった。
あとは写真を撮りながらバスターミナルまで走り、さらに押し歩きで定番の河童橋へ。穂高がグッと近い。ああ、このまま登りに行ってしまいたいなぁ、と思いつつ菓子パンを3つかじる。鳩と鴨が寄ってくる。何でこんな甘ったれてるんだ? 野生動物にはひとクズたりとも与えませんよ。
山頂はさらに雲が厚くなって来てしまったが、時間もあるし明神池まで散策。上高地の特徴である瑞々しさを存分に楽しめる遊歩道になっている。ただし今日は荷揚げのヘリコプターがうるさかった。明神橋を渡って引き返すころになると空の雲がどんより。やばい、雨が降り出す前に脱出しなければ。
チャリでたった3時間ならまたいつでも来る気になれる、かな…。上高地に、そして釜トンネルに別れを告げ、トンネル街道を下りて行く。頼みのダイナモライトが消えた時は焦ったが、ただの接触不良だった。帰りに要した時間も3時間。よっぽどヘロヘロだったんだな。うちに着いてまずしたことは、目・顔・体に付着した排ガス粉塵を洗い流すことだった。
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