8/15分 三国の四方を走るべし
標高があるせいか、前線南下で秋風が入っているのか、とても寒い夜だった。前回の旅で失った自転車やテントを買い戻して何とか実現したこの北海道だが、資金不足で寝袋が無い。出来るだけの重ね着をしても耐え切れず、朝4時にギブアップして朝食にする。6時前には糠平を出発して北上。申し訳ないくらい良い天気だし、チャリのスピードは旧国鉄士幌線のアーチ橋梁群を見て回るのに丁度良い。クライマックスは湖の対岸から遠望するタウシュベツ橋梁。季節により水没を繰り返し、古代遺跡のように枯化している。幌加駅跡には線路とホームが残されているが、周囲に人家は全く無い。
終着の十勝三股駅も、かつて人口1500を擁したと云うが今はレストランが一軒あるのみ。ここから登り坂が本格化し、標高を700m、800mと上げてゆく。圧巻は原生林にかかる松見大橋。人口30万都市があってもおかしくない十勝三股盆地は、見たこともない広大な樹海である。かつては湖だったりしたのかな。周囲の山々もよく見渡せて、心に刻まれるよう。まもなく北海道の車道峠最高所、三国峠1139mに到達。カロリーメイトを早目の昼食にして、日本海・太平洋・オホーツク海の分水嶺である三国山の近くをトンネルで抜ける。
これで所期の目的は達した。あとは上川にでも下りて、列車に乗って帰ればいい。しかしもう一日、予備日を設けてあるのだ。という訳で大雪湖まで下りたら東に折れ、国道39号で石北峠1050mに登る。昔走ったことのある道だがすっかり記憶が薄れているし、峠も俺の知ってる石北峠と違う(後で調べたら建物は一度全て焼失したらしい)。売店は案外良心的な価格設定で、格安な土産物が目に付く。自分はカルビ巻き200円と、ソフトクリームトリプル500円を食べる。このソフトクリームは旨くなかったが。
冷えた腹で、北見地方へ豪快に下りてゆく。何だかこの道、三才山トンネルの東側(上田市)にイメージが似てるんだよね。全然広いはずなのに。温根湯温泉で口直しにまたソフトクリームを食い、大江本家の風呂に入る。おお、広くて良い感じ。キャンプ場もあるし今日はここまで、と考えていたが時間はまだある。脚が「走ってもいいよ」と言うので、もう少し頑張ることにした。向い風にめげずアウタートップで留辺蘂手前まで下り、左折して国道242号を北上。追い風に助けられつつ金華峠360mを越え、ランドナーらしからぬハイスピードでぶん回す。
年に数度のマラソンや自転車ヒルクライムレース、またそれに向けたトレーニング。何のためにやってるかと言えば「より自由に旅を楽しむため」って理由が大きい。今こそその成果を発揮する時だ。生田原の街を抜け、間もなく遠軽…って所で力尽きた。ソフトクリームの腹持ち悪さを甘く見ていたぜ。仕方がない、カロメ半箱でエネルギーを補給し、スローダウンしてようやく遠軽の街に入る。
買い出しを済ませ、少し暗くなってきた。駅前の地図によれば丘の上にキャンプ場があるようだが、もう登る気力がない。瞰望岩(がんぼういわ)の真下にある公園で、ゲリラ的にキャンプする。こういう時に緑色のフライシートだと、目立たなくて良い。夕食はまたもやし入り麻婆豆腐だが、ひき肉も炒めてもう少し料理らしくする。本日は走行距離156km、獲得標高差1000mほど。存分に走って、北海道サイクリングが終わりつつある。あと数日続けられれば…とも思うが、米は使い切ったし帰りに乗る列車も決まっている。
いろいろ、どうなったかなぁ。ネットとかメールとか。毎日毎時かじりついていた先週までの過去が懐かしい。
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