11/9分 戸土忘備録
キャンプだというのに10時間半も熟睡してた。これで寝不足が解消したなら良い。コンビニ朝食を摂りつつ日本海沿いに出る。宮崎海岸は目を皿にして探せばヒスイの原石が見つかるとか見つからないとか。境橋を渡ると新潟県、越後国の振り出しを意味する市振の宿。
海道の松を過ぎるといよいよ天下の険、親不知子不知に入る。北アルプスがそのまま海に落ちる断崖絶壁に、国道8号の洞門がへばり付くように延々と続くさまは壮観だ。途中の天険トンネルは、歩行者と自転車は旧道で避けることができる。一枚岩に彫り込まれた「如砥如矢」の字が、明治期の開道の喜びを伝える。それまでの北陸道は遥か眼下、わずかな波打ち際を命懸けで通行したんだとか。現代の自転車旅は、多少のアップダウンとトラックの轟音に耐えれば楽々抜けられる。
ぽつぽつ降り出した雨に急かされるように海と別れ、姫川左岸を遡る。このへん糸魚川グランフォンドで走ったわー。翡翠橋と中山橋の間は地図では道があるように見えるが、行ってみたら崖崩れで長らく通行止、永遠に復旧しそうにない。引き返して国道148号に乗り、東側の根知谷に入る。正面には雨飾山が雨に飾られ、左手の駒ヶ岳は岩壁が凄い。進むほどに坂は急になり、昨日の黒部峡谷に勝る秘境感がアップしていく。
脚力の限界に挑戦するかのようなダートの激坂になり、とどのつまりが戸土集落。峠より海側に信越国境があるため、長野県で唯一海が見える集落だった。住民は今いずこ、季節によっては管理に来るらしいが、ほぼ廃村と言える状態だ。分校跡の碑のほか小屋数軒。奥の方にようやく雨戸の閉まった古民家が一軒見える程度。松本街道はこの先険しい峠道を経て松本まで続くが、この天気では冒険すまい。来ただけで満足したので、姫川まで引き返す。
根知駅から大糸線に乗り、南小谷から特急あずさでさっさと帰松。一泊二日でも近場でまだまだこんな面白いサイクリングが出来るんだ、と再確認できた旅だった。
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